BLM東京のジェイミー・スミスは、交差する政治の複雑さについて話し、黒人そしてLGBT +であることが何を意味するのかを調査し、現在の世界的な政治情勢の中、そして私たちの歴史的な瞬間にここからどのように進むべきかを探ります。
執筆者:Alexine Castillo Yap
Voice Up JapanはBLM(Black Lives Matter)東京の副会長、及びグラフィックデザインチームの責任者であるジェイミー・スミスさんと話す事ができました。 BLM東京の活動外ではグラフィックデザイナーそして教師として働いているジェイミーさん。元々米国メリーランド州ボルチモア出身で、2017から東京に住んでいます。
このインタビューでは、ジェイミーさんにLGBT+であり、そして日本で人種の解放と平等を求める運動をしていることのつながりについて尋ねます。交差性と政治、およびその合間のすべての複雑さについて説明します。
A:まず、LGBT +コミュニティとご自身はどのように関係していますか?希望の人称代名詞、性自認、性的指向について教えてください。
J:私はバイセクシュアルです。そして無性です。つまり、自身が性別を持っているとは感じていないので、「Xジェンダー(ノンバイナリー)」とそれをも含む「トランスジェンダー」の分類とされます。人称代名詞を使うのは好きではないですが、便宜上「彼女」を使っています。
A:かっこいいですね。代名詞を使わない選択をする「Xジェンダー・ノンバイナリー」に該当する人のことはあまり知りません。
J:成長する過程で常に自分の人種を意識してきましたが、女性であると感じたことはありませんでした。思春期を迎えるまでは、女性または女の子として扱われたことはなかったと思います。その時点でも、なぜ人々が「あなたは今、女性になったのだ!」と言ってくるのかよくわかりませんでした。
日本ではたくさんの人が私を見て「あなたはとても女性らしいのに、どうして自分を女性のように感じないの?」と聞いてきます。個人的に私はここに引っ越すまで、より女性らしくもなったり、自分のアイデンティティを受け入れたりすることもありませんでした。いわゆる女性らしい服装は好きですが、それを自分の趣味以前にをここのトレンドのように感じていて、まず「周りに合わせる」ために着るようになりました。「この服装を続けたら、きっとそのうち自分を女性のように感じるだろう」と思いました。
しかし、そんなことはありませんでした。ジェンダーは私の生活にあまり影響を与えないので、ジェンダーを本当に理解するのに左派的または進歩的な人と比べて比較的時間がかかったのかもしれません。
A:「代名詞」の概念外のものと自分を認識したきっかけは何ですか?
J:日常のやり取りの中でも、自分に一番合っていると感じただけです。周りの多くの人が私を「ジェイミー」と呼んでいること、私を指すときに人称代名詞を実際には使っていないことに気づきました。それで私は「あ、これがいいかも」と感じたのです。
A:過去4年間で、日本のジェンダー談話に変化や大きな動きがあったと思いますか?
J:変化があったのか、それとも私がただもっと注意を払うようになったのか分かりません。最初にここに来たとき、私は日本の社会問題や政治に注意を払っていませんでした。気にかけたかったものの、まず落ち着き、日本語を学ぶことに集中していました。しかし、今は日本のツイッターをよく見ています。翻訳機能を使い、人々が今注目している社会問題を知る術として、ツイッターは非常に役に立っています。これらの社会問題には、平等、セックスワーカーの権利、性的暴行の立法、独身の母親の受け入れと支援等の女性の権利の問題に加えてLGBT権利、外国人の権利と差別、日本の混合人種と少数民族に対する差別が含まれます。
A:ジェンダーに関する談話や理解において、アメリカと日本の間に違いがあると思いますか?
J:アメリカでは日本よりもずっと主流になっている気がします。日本ではジェンダーにまつわる会話が比較的、個人というより団体から発信が行なわれてるようにみえるので、もう少しニッチに感じます。同じこととしてはアメリカ人の方がもっとジェンダーについて話したいと思うかもしれませんが、アメリカでもここでも、ジェンダーというトピックを不快と感じる人がいると思います。 「それは個人の問題」、「それについてわざわざ話す必要はない」と、私たちがもっと若かった頃にゲイやバイセクシュアルであることが言われていたこと同様に言われています。
確かに個人的な判断だと思いますが、敬意や人称代名詞などについては、他人が間違ったせいで呼んでしまう場合があるので、話さざるを得ないと思います。性別を間違えられる人にとってそれは不快な経験なのです。
A:自身のLGBT +アイデンティティにどう至ったのか、またはBLM東京のような人種解放運動とどのように関連しているか教えてください。
J:交差性は重要ですが、導入または維持するのが決して簡単なことではありません。黒人コミュニティ内でさえ、LGBTコミュニティについて、そして彼らがBLM運動に参加するべきかどうかについては異なる考えがあります。私はこの運動がクィア(セクシュアル・マイノリティ)女性によって始められたから含められるべきだと思っています。そしてBLM東京においては、行進を計画した人々の大部分、または少なくとも50%がクィアでした。したがって、交差性は重要です。黒人のトランスジェンダー女性は黒人コミュニティの中で最も高い割合で殺されています。だから私たちにはここにいる権利が、声を上げる権利があるのです。そして、運動のリーダーとして、私たちはその声のために戦っていきます。
しかし、コミュニティ内の交差性を模索するのは、そのコミュニティ内の人だけの仕事です。他のグループが「それはこうするべきだ」と介入してくるのは好きではありません。黒人、クィア、LGBTの人々は自分の意思表明をできますし、私個人もしてきました。「LGBT+運動がBLM運動を脱線させる可能性があると思わない?」と尋ねられる度に私は自分たちが人種的暴力だけでなく、反トランスジェンダー、同性愛嫌悪の暴力の標的にもなっていると反論します 。だからもちろん、私たちも気にかけ、大切だと思っています。
A:LGBT+運動やコミュニティにおける人種的包括性についてどう思いますか?彼らが交差性に対してとっている行動について、どう考えていますか?
J:それは場面により大きく違うので、難しい質問です。 LGBT +、黒人、または白人だけでなく、誰もが物事を簡単に理解するために、他人を一般化しては一枚岩として扱うことを望みがちだと思います。しかし、それでは上手くいきません。そしてそれがある意味、特定のコミュニティが崩壊してしまった理由だと思います。
「黒人のLGBT+運動は全体的なLGBT +運動とは異なる。さまざまな種類の差別や暴力に直面していて、特有の問題を抱えてるからだ」などといった発言を聞くことがあります。それは人々が「白人フェミニズムは私たちのフェミニズムではない」と言うようなものです、白人は必ずしもマイノリティコミュニティ内の特定の問題に焦点を合わせたくないから。
A:LGBT+コミュニティはホワイトウォッシングされていることがあり、多くの人が、LGBT+コミュニティ内に黒人も存在することを忘れることがあります。 LGBT+の解放が人種の解放と並行する必要性について多くの会話が行なわれていますが、これの重要性について話してもらえますか。
J:人種的マイノリティでありLGBT+でもある人々にとって、LGBT+権利は道端に追いやられやすいので、二つの解放運動は並行する必要があると思います。根拠のない心配事かもしれませんが、人種解放だけが遂げられたとしたら、人々は「これでやるべきことはすべって終わった」と思ってしまうのではと心配しています。 (笑)
すべての種類の不平等が拡大しないためには、人種平等を手に入れると同時に有害な男らしさや性別の境界線と壁といった考えを取り除かないといけないのです。 「とりあえず人種平等を達成しよう、他はあとから実現できる」と主張する人もいますが、私にはこの二つの目的は分離して実現できるとは思えません。
たぶんそれは、人々が単なるマイノリティであり、そしてLGBT+であるという存在ではないからです。私はある日は黒人で、とある日はバイセクシュアルそして無性であることを選択することはできません。目を覚ますと同時にバイセクシュアル、無性、そして黒人なのです。私のアイデンティティを構成するにあたって一個一個すべてが重要なのです。一気に私のすべてを受け入れられたいのです。
A:選挙での投票行動以外で、人種、性別、LGBT+の平等に少しでも関心がある人なら誰でもできることはあるでしょうか。
J:運動に参加するには、常に戦闘態勢であり、まじめにボランティアをしてはすべての投稿を共有する必要があるとは思いません。楽しむこともたくさんあります。アクティビズムは常に重篤なものでなければならないという考えを持っている人もいると思います。それで「何故コンサートをやるんですか?」という質問をされることもあります。しかし、いつも憂鬱な気分ではいられません。時には何か楽しいことを通して教育を広めるのが最良の方法なのです。
また私は、個人の影響範囲内での個人的な責任を気にかけていて、それが最も重要だと思っています。身の周りの差別を、それが無意識だったとしても注意することに慣れる必要があります。怒ったり怒鳴らなければならないという意味ではありません。それは「今のは間違っていますよ。」と恐れずに言えること、そして自分のその言葉に誠実であることです。特に家族や友人と話し合い健全な議論をしたり間違いを指摘したりする能力が失われているように感じる中、私たちは進んでそれをできるようにならなければならないと思います。結果的に双方が同意して終わるとは限られません。私の母は今、LGBT+の問題だけでなく、私についても、絶え間ない会話を通してもっとよく理解するようになりました。なので、愛する人々と健康的な議論をする必要があります。
それが難しいことを知っています!人に直接異を唱えるのは怖いことかもしれませんが、やらなければならないのです。
A:現在の世界の政治情勢、そしてドナルド・トランプが米国で選出されてから起こったすべての中で、なぜ最近、交差的代表者がより注目を集めていると思いますか?ジョー・バイデンの選出後、それを維持する方法は何ですか?
J:マイノリティが沈黙するのを我慢出来なくなって、それが非常に大きな牽引力になったと思います。前世代には「溶け込み、トラブルを起こさない」ことを優先する文化が少しあったと思いますが、私の世代はもうそれが受け付けなくなったのではないと思います。
だから私たちは沈黙をやめるつもりはないと思います。そして、私たちは沈黙することはできないと思います。自由主義の人々が、安堵するには早すぎるということを認識し、平等、変化、多様性や幸福は大統領の交代だけで持たさられるものではないことに気づくことが重要です。米国上院は何も変わっていません。最高裁判所は依然として過半数が共和党員です。
「祝うことさえ許されないのか。」という話がありました。祝い事は結構だと思いますが、祝うことと「愛が勝った」、「私たちは多様性に投票したのだ」などといった非常に有害なことを言うことには違いがあります。投票するだけでは多様性や寛容性は手に入りません。
現在、BLM東京はRealTalk.と黒・ジンに取り組んでいます。RealTalk.は世界中の黒人問題についての認識を高め、黒人問題に関心のある人々に無料の教育リソースを提供することを目的としたバイリンガルウェビナーシリーズです。そして黒・ジンは日本の黒人アーティストやクリエイターを強調することを目的としたジン。また、今年初めにライブストリーミングされた「Harmonic Wavelength」(ハーモニック・ウェイブレングス)コンサート(ライブ)を来年度も開催することを望んでいます。