By Sachiko Ishikawa | Translated by Hatsune Sawada
日本は世界でも有数の養子縁組率を誇っていますが、その実態を知らない人は、「養子」を子供だと思い込んでいることが多く、日本人以外をよく驚かせています。実際、日本では養子縁組をする家族のほとんどが成人男性を家族に迎えることを選択しており、これはこの国に家父長制が深く浸透していることを示す一つの証拠となっています。日本でmetoo運動やフェミニズム運動が高まっている中で、これは勝たなければならない戦いの一つなのです。Voice Up Japanはこの問題についていくつかのことを調べました。ここに出典も含めた結果を紹介します。
エコノミスト誌(「Adult adoption in Japan: Keeping it in the family(意訳;日本での成人の養子縁組:公にしない事実)」)は、2011年に日本で養子縁組された人数が8万1千人を超えたと報じています。そして、そのうちの90%以上が20代、30代の成人男性であったそうです。さらにFreakonomicsは、2011年の記事(「Why Adult Adoption is Key to the Success of Japanese Family Firms(意訳;日本のファミリー企業では、なぜ成人の養子縁組が成功の秘訣となっているのか)」)で、養子の98%が25歳から30歳の成人男性であると述べています。
成人の養子縁組は、日本文化の中では新しい現象ではないのです。Unseen Japanの記事によると、始まりは大きく遡って13世紀、京都で浄土仏教が家父長制の維持のために養子縁組を推奨したことからとされています。しかし、社会全体の定番となったのは江戸時代のことです。娘しかいない武家では同格の他家の息子を養子にして家の存続を図り、息子を「譲った」家には他の息子が新しい家長として兵役を免除されるという利点があったのです。
そして、社会も技術も進歩した現在、この伝統は変わらないどころか、独自に発展しています。
日本のビジネス企業は常にガラスの天井を維持してきましたが、何世紀にもわたって受け継がれてきた成人男性の養子縁組ほど、それを証明するものはないでしょう(France 24のドキュメンタリーに登場した福山の小さな診療所から、4人目の養子である鈴木修がCEOのスズキ株式会社のような多国籍企業までがそうです)。
この養子縁組のプロセスは単純明快で、姓を捨てて今までの戸籍から外される代わりに、新しい名前、帰属意識、そして実子と同じ権利を持てるという特権を得ます。これには、相続権や家業を継ぐ権利も含まれます。唯一の条件は、受け入れる側が養子より年上であることです。
また、これらの養子縁組を行う家族は、婿養子が一般的で、娘の夫を息子として迎え入れることになります。養子縁組のメリットの1つは、相続人の数により税金の控除額が増えるため、相続人の数が多いほど、資産の相続税が安くなることです。実際、1988年に政府は、1人あたりの養子縁組の数に法的な制限を設けなければなりませんでした(養子縁組を行う家族に実子がいない場合は2人、実子がいる場合は1人)。
注:意外なことに、最高裁もこの慣習を認識しています。2013年、最高裁は、父親が兄の息子(20代)を第4の相続人として養子にしたと主張する2人の娘の訴えを退けました。娘たちは、父親が相続税を安くするために養子縁組をしたと主張していましたが、裁判所は、仮に父親が税金を払うために養子縁組をしたとしても、何ら問題はないと判断しました。
結婚した女性の4.1%のみが自分の元の姓を名乗っており(別姓は法律で認められていません)、自分の姓がなくなってしまうかもしれないという不安を抱える日本では、何世紀にもわたって行われてきた成人男性の養子縁組が、現在の仕組み全体を変えるよりも簡単な解決策のように思えるのは、容易に理解できます。残念ながら、最近のデータをみても、教育で男性が優遇されており、同じ教育的な機会を得るためには、女性は男性よりも努力しなければなりません。このことは、以前東京医科大学が女子学生の成績を不正に操作して、彼女たちは結婚や出産を経て職業を辞めると主張した不祥事にもつながっています。女性が努力しても報われないような仕組みなら、男性が女性を犠牲にして成功し続けるようにするのは簡単です。
事態をさらに悪化させることに、少子化が原因で高齢化が進み、家業を継ぐ人がいなくなったという社会理論もあります。また、こういった人口問題の責任を女性だけに押し付け、男性が支配する世界で女性を閉じ込めてきたシステムのせいではなく、女性の長時間労働や出産などに対する興味のなさのせいだと主張する人も多くいます。
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