レスリー・リー著、神沢希洋訳
10月31日、台湾にてコロナ以降最大のプライドパレードが行われた。LBGTの権利を支持するアジアでの先駆者として、当事者たちの未来に希望の光を灯す。
一年に一度行われてきた台湾LGBTプライドパレードも、今回2020年10月31日に台北で行われたもので18回目になる。他の国々がコロナウィルスのためにオンライン開催を余儀なくされる中、台湾は国内感染ゼロ連続200日以上を記録し、従来のパレードが可能となった。実際にLGBTパレードに参加するとどんな感じなのか?LGBTQIA+コミュニティに関して、台湾とそのLGBTプライドパレードがほかのアジア諸国と一線を画しているのはどうしてだろう?留学先である日本に戻れなくなってしまい台湾に残った私は、台湾LGBTプライドに参加して以前参加した東京レインボーパレードでの経験と比べてみることにした。
台湾でのLGBTプライドってどんなもの?
台湾でのLGBTプライドパレードは、2012年に創立された台湾彩虹公民行動協会(台湾レインボーシヴィルアクションアソシエーション)によって毎年開催されている。だが、台湾のプライドカルチャーの始まりは2003年にさかのぼる。プライドパレードとはそもそもアメリカ、ニューヨーク市にて、1969年6月に起きたストーンウォールの反乱をきっかけに、LGBTQIA+コミュニティに関わる社会問題への闘争が人々の間で広まったことが始まりだ。なので多くの国はプライド月間や記念日を6月にしているが、台湾でのプライド記念日は毎年10月の第二土曜日と決められている。
台湾のプライドパレードは起源が独特で、2003年にLGBTコミュニティ内での多様なグループを可視化するための社会活動として始まった。パレード行進は台北でLGBT当事者たちの集会場として使われてきた歴史のある228メモリアルパークで開始された。そして現在でも、台湾でのプライドパレードは社会運動としての側面が色濃く、他の国のプライドパレードと比べて商業化や企業の宣伝に利用されることを最小限に抑えていることが特徴だ。
さらに、台湾のプライドパレードは道路の使い方が他の国と違っている。多くのプライドパレードでは大通りが封鎖され、パフォーマーやフロートが車道を占有し、観覧者は歩道からパレードを観る形をとっているが、台湾のパレードでは行進順路が車や自転車、徒歩の参加者全員で共有されているため、通りすがりの人もいつでもパレードに参加することができる。
日本でのプライドパレードは?
日本では4月末に行われる東京レインボープライドが中心的なパレードだ。このパレードは4月の最終の週と5月の最初の週の”プライド週間”の間に二日間かけて行われる。例年の東京レインボープライドでは、参加者は代々木公園を出発し表参道を通り抜け、原宿、渋谷まで練り歩くが、今年はコロナのためにオンライン開催となった。
日本のプライドパレードは1994年に始まったが、しばらくの間開催と中止が繰り返されてきた。2012年に東京レインボープライド(TRP)という主催団体が創設されてからは、毎年の開催が可能になり、今では日本国内最大のLGBTイベントとして知られている。2019年のイベント初日には12万人もの人々が集った。また、去年のパレードは行進者が1万人を超え、日本のLGBTQIA+史において重要な節目となった。
今年のオンラインパレードでは、参加者は#TRP2020 や #おうちでプライドというタグと一緒にメッセージや写真をウェブサイトに投稿することができた。また、もともと予定されていたトークイベントもオンラインに移行し、TPRのツイッターアカウントで配信された。”Your happiness is my happiness 〜あなたの幸せは、私の幸せ〜”をテーマに掲げ、TPRは人々がそれぞれの幸せやお互いの存在を祝福できるようなイベントを目指した。
Beauty, My Own Way 美しさ、私らしく。
“Beauty, My Own Way 美しさ、私らしく。”がテーマになった今年の台湾LGBTプライドは、台湾で同性婚が合法されてから二度目のパレードとなった。中国語でのテーマは”成人之美”。台湾プライドパレードの18年目を記念して、日本語と同じく大人を意味する”成人”という言葉が入った中国語の熟語が使われた。この熟語は”他者を助けて善行を成就させる美徳”という意味を持つ。
2019年に同性間の結婚の権利を保障する法律が可決されたことにより、台湾はアジアで初めて同性婚が合法化された国となった。その流れを受けて、今年のプライドパレードではLGBT教育に注目が置かれた。主催団体はこう語る。”私たちはLGBTQIA+コミュニティを可視化するだけでなく、当事者たちの美しさ、快活さ、集団的な変化を祝福するべきです。”
世界中でコロナウィルス感染が長引く中、台湾は感染者数の低さからプライドパレードを安全に開催することができた。去年の参加者が20万人と記録的な数字を出したのに対し、今年は海外からの参加勢が台湾に入国できなかったため、13万人になった。台湾では毎年アジア中からたくさんの人々が集まり、プライドの祝祭に参加する。アジアのLGBTQ+コミュニティの平等と権利の問題において、台湾は旗振り役として他国々に道しるべを示していると言えるだろう。
台湾と日本、両方のプライドパレードの様子
今年、私はネットでボランティアの申し込みをして、台湾LGBTプライドパレードに参加した。今回のパレードでは10種類以上のボランティア活動があり、私はメインのパレードの傍で参加型のゲームやイベントを通して参加者と交流するチームについた。催し物の一つは、ボランティアたちが大きなフレームを掲げて、参加者がフレームと一緒に写真を撮れるようにするというもの。また、今年のプライドパレードは教育に力を入れていたため、もう一つ催しごとは参加者がゲームを通してLGBTコミュニティに対して中傷になってしまう言葉を学ぶ、というものだった。東京のプライドパレードが2日間に及ぶのに対して、台湾のプライドは1日だけだ。一度に大勢の人が行進に参加するため、パレードは北回りと南回りの2つのグループに分けられている。
今年の台湾プライドパレードの順路図
パレードは一般の車や歩行者と道を共にするので、公式LGBTプライド団体のメンバーではない人でも、指定された区間ではパフォーマーやフロート、団体などと一緒に行進に参加できる。道を渡ったりするときには大変な場面もあったりしたが、たくさんの家族が子どもを連れて参加しているのを見て私はとても心を動かされた。多様なジェンダーや年代の人々がこんなにもたくさん集まって、一緒にプライドパレードに参加している、ということにただ圧倒された。多くの有名人や政治家などがイベントステージに登壇するほか、会場では個人運営の屋台が立ち並び、様々な商品を提供していた。
東京プライド2018年と2019年
私は昨年、東京レインボープライドの一端を担うアムネスティ・インターナショナルグループに招待されて、東京のプライドパレードに参加することができた。私はPVH社(トミー・ヒルフィガーやカルバンクラインを所持する企業)のグループについていて、参加者はプライドを象徴する虹色のシャツなど、行進するときに身に着けられる色々なグッズを貰った。パレードとともに行進しながら、歩道から観覧するたくさんの人から”ハッピープライド!”と声をかけられたり、皆とハイタッチしたりするのは心が躍る経験だった。台湾のLGBTプライドに比べ、東京レインボープライドは企業によって運営されている参加型の屋台が多い。また、来場者はパレードの行進には参加できないということもあり、パレードというよりは日本のお祭りに近いという感覚だった。屋台は個人運営のものもたくさんあったが、大半が企業によるものだったという印象がある。渋谷、原宿、表参道で町中のレストランやお店がプライドを支持する虹色で溢れているのを見て、心の底から温かい気持ちになった。私はプライドパレードを通してもっと多くの人がLGBTコミュニティについて学び、権利の平等をもとめる運動に参加するようになってほしいと願っている。