中島遥作/菊池幸訳
その疑問から出発し、「生理用品の展示」を企画したのが、性教育プロデューサーの中島梨乃(なかしまりの)さんだ。昨年、慶応大学湘南藤沢キャンパス(SFC)のイベント『SFC creative week』で行われた展示は、生理、生理用品について考え直すきっかけを作った。今回、Voice Up Japanでは中島さんに『SFC creative week』参加の経緯や展示への反応について伺った。(※インタビューは再構成済み)
(中島さんのツイッターより)
ー生理用品がトイレに置いていないことを、疑問に思ったきっかけは何ですか。
ちょうど去年、生理の色んな事が変わっていきました。『生理ちゃん』*1の映画が作られたり、生理の絵文字が iPhone に追加されたり。あとは『#NoBagForMe』*2を会社がやったりと色々ある中で、大学生の自分ができることは何だろうと考えていました。その時に、アメリカの ツイッター社などは、既にトイレに生理用品を置いているという記事を見つけました。それを見て、確かに同じ排泄行為なのになんで生理用品は置いてなくてトイレットペーパーだけあるんだろう、と疑問に思いました。そういう疑問をみんなにももう1回持って欲しいと思い、大学でやってみようという時に、ちょうど『SFC creative week』があったのでやってみました。
ー『Creative week』とはどのようなイベントですか?
キャンパス全体をアートギャラリーにできる企画です。
『SFC creative week』の企画をしてくれた人が、企画書のフォーマットを作ってくれて、そこで私たちは「生理用品をトイレで展示したい」としました。キャンパス内の10名ほどのメンバーと協力して行いました。生理用品をただ設置するだけではなく、生理用品には様々な選択肢があることやその使い方を書いたポスターを貼ったりして、トイレをしているときに目に入るように工夫しました。ポスターから、より詳しく性について学べるサイトへ繋ぐことができたらなお良かったのですが。
ーこれはcreative week期間内限定として行ったんですね。
コロナがなければ、今年の4月からもう一回やろうかなと思っていました。他の学校に広げていくことを考えていました。コロナの状況で、公共の場にトイレットペーパー以外のものをさらに置くとなるとハードルが高くなってしまって、今はできていません。
ー ツイッターでも、「高校や大学で生理用品を置きたいという方に協力します」という呼びかけをされていましたが、これも現在では難しいですか。
そうですね。希望されている方を集めて、9月くらいからプロジェクトをやろうとしていたんですが、私のキャパの問題と、コロナで上手く行かないのではないか、ということが怖くてまだ全然進められていなくて。やりたいと言ってくださった方の中に高校3年生の方とか、もうちょっとで卒業するという方がいます。なので、できる学校から少しずつ動き始めています。
ー高校生の方からも反応があったんですね。
高校生の方とか、学校の先生からも連絡が来ています。できる学校ではやっていきたいなと思っています。
ー生理用品を置いたことによって、大学や学生からどんな反応がありましたか。
そもそも生理があることが当たり前、生理用品を自分で買うことが当たり前だったと思うので、正直な反応としては「なんでそんなことするんだろう」みたいな感じではありましたね。お金に余裕のある人が結構大学に多いなと感じるので、そういう人たちは「別に自分で買えるし(なくても)いいよ。逆に汚いんじゃない」みたいな反応でした。反応としてはそういうことが多いけれど、私の友達が授業を受けている時に、休み時間中とかに「大学に生理用品置いてあったけど見た?」みたいな会話が始まって。会話のきっかけや、生理について改めて考え直すきっかけになったと聞きました。「あったら便利だよね」「女性としては嬉しいな」という意見もありました。
でもやっぱり「何で生理用品だけを無料にするんだ」という批判もありました。生理用品と絶対に比べられるのが髭剃りなんですよ。「男性も髭剃りをしないといけないから、なんで生理用品だけ無料にするのかよくわからない」みたいな。色んな方から髭剃りと比べられることがすごく不思議だなと思いました。以前、生理用品代は生涯で何十万かかるといった
ツイートをした時も、「髭剃り代は140万だ」といった反論をされました。「そこを同列に語れるんだ」と思ってすごく不思議でした。これについてはもう少し慎重に考えていきたいです。
ー男性に不利だとか、生理のこと自体が恥ずかしいものといった風潮があると思います。これが当たり前のこととして受け取られるために必要だと思う取り組みや、やりたいことはありますか?
本当はコロナがなければ今もやっている予定だったのですが、色々な大学にこの活動を広げて、トイレは誰でも使うものだから、そこで関心のない層にも疑問を持ってもらうことができたらなと思います。やっぱり、私個人では日本社会全体を変えるのはすごく難しいなと思うので、民間企業や政府などが動いていく必要があると思います。一つ一つの企業がアメリカのツイッター社みたいに、お金を出して生理用品をトイレに置いたり、スコットランドで生理用品が無償化されたように、国が援助するなど、社会全体で動いていくべきだと考えます。
ー世代間で、生理に関する意識が違うなと思うことはありますか。
生理について話せる環境はちょっとずつは整ってきてるのかなと思っています。生理がある人同士にはなるけれど、「今日生理だからお腹痛い」みたいな話はできるようになっているのかなと思っています。「どうやったら生理痛をなくせるか」等の解決方法まではなかなか話せているとは思わないですが、上の世代よりは生理についての話はできているのかなと思います。
ー今後やってみたいこと、発信していきたいと考えていることがあったら教えて下さい。
性教育全体としての話になるのですが、例えば「セックス」とか性的な言葉を(検索エンジンに)入れたらアダルトサイトがどうしても上位に出てきてしまう現状があると思います。「セックス」と調べた時に適切な情報を得られるようなサイトが出てくるようにしてほしいということを、検索エンジンサービスのYahoo!や Google などに訴えかけるような署名をしたいです。「生理」と調べた時も、科学的な根拠のある記事がなるべく上に出てくる仕組みを作ってもらえたらなと思っています。アプローチ方法として署名活動もいいと思うし、考え中です。
ーありがとうございました。
*1『生理ちゃん』…小山健による、生理をテーマにしたマンガ作品。2019年に映画が公開された。https://omocoro.jp/matome/113450/
* 2『#NoBagForMe』…2019年ユニ・チャーム社がスタートしたプロジェクト。「生理、生理用品について気兼ねなく話せる世の中」であることを目指し、新しいデザインや商品の開発を行っている。http://www.unicharm.co.jp/company/news/2019/1211463_13296.html.
中島梨乃(なかしまりの)
性教育プロデューサー。SNSを通し性教育に関する情報発信やイベントの企画・運営を行っている。
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