日本の婦人科のセックスポジティブアプローチ

エルドアン・エリフ

翻訳:菊池幸

名古屋市の咲江レディスクリニックでは、丹羽咲江先生と長島史織さんが婦人科にセックスを否定しないアプローチをしています。Voice Up Japanは二人にインクルーシブ診療や健康問題だけでなく、国会での女性政治家の割合の低さなど、婦人科を取り巻く問題を理解するため、お話をしました。

セクシャルヘルスは医療専門家と話すには脆弱なトピックとなる可能性があります。さらに適切な環境が専門家により維持されていない場合、患者は心配の元について話すのを避ける可能性があり、最終的に必要とする治療を受けることができなくなります。そのため、一部の医療制度では、セックスに否定的な文化を変えるため、「セックスポジティブ」を導入し始めました。毎年恒例のNPO教育学会ではデビッド・トーヴィー医師と恋愛コンサルタントのターニャ・ヤーヴィックがセックスポジティブヘルスケアはセクシャリティが健康と幸せの重要な一部であることを認めていると述べます。セクシャリティはさまざまであり、セックスの体験や方法は人によって異なります。誰もが徹底的な健康教育と批判的ではない専門家にアクセスする権利を持っています。名古屋市池下町では咲江レディスクリニックの丹羽先生はセックスネガティブ文化を打ち破ろうとしている婦人科医の一人です。

患者は他県から咲江レディスクリニックを訪れる

「他県から来る患者さんの多くは性交痛の患者さんになります。痛みを伴う性交やセックスを恐れ、患者はセックスができない状態にいるということになります。」と丹羽先生は言います。これは患者が自分の医療問題について最寄りの医師に話すことにまだ不安を感じているという日本の問題を強調します。「もっとゆっくりと患者さんたちと接し、じっくりと話を聞きながら患者さんの悩みを解消していきたいと思い、クリニックを開院しました」と丹羽先生は言います。「性について相談することは日本社会においてはまだまだハードルが高く、患者さんの多くは不安を抱えて来院をされます。」セックスは依然として汚名を着せられており、日本社会ではタブーと見なされているという事実は、患者が心配事を言葉で表現し、値する医療を受けることを困難にしています。「診察時には今のセックスの状況をこちらから質問するようにしています。いろんなことが話しやすい環境を作っています。HPには性交痛のページを作成し、『セックスは本来は痛くない』ものとしてポジティブに伝えています」と丹羽先生は説明します。これらは婦人科クリニックでセックスポジティブな環境を作り出すために丹羽先生が取っているイニシアティブの一部です。

セックスネガティブ文化とは?

セックスネガティブ文化では痛みを伴う性交やセックスから生じる可能性のある望ましくない状態を避けるためにセックスをしないよう勧めています。「セックスネガティブ」と「セックスポジティブ」は1920年代頃にウィルヘム・ライヒによって造られた用語ですが、最近、これらの用語を社会に批判をもたらす為に真剣に考えられるようになりました。セックスネガティブ文化は基本的にセックスは悪い・危険・避けるべき行動と汚名をきせる私たちの社会を指します。また、異性愛規範の夫婦間のみのセックスを奨励するので、LGBTQIA +の人は外されます。しかし、丹羽先生のような医師はこのような文化をセックスへのスティグマをなくし、クィアの個人に対する包括的な方針に従うことによって、セックスポジティブアプローチで変えようとしています。

図1.咲江レディスクリニックの丹羽咲江先生。咲江レディスクリニックを2002年にオープンしました。クリニックの営業以外にも中学校、高校、大学を周り、性教育を行っています。

「私、介護して20年経つんですけど、20年前、産婦人科を建てる場所は表通りではなくて裏の通りで、入り口はわかりにくいところにありました。ラブホテルのように、わかるといやらしいかのように。今は駅の近くとかわかりやすいところですけど」と丹羽先生は言います。少し前までは、産婦人科は「隠すべきもの」として扱われていました。

LGBT, セックスポジティヴィティーと婦人科学

「LGBTに対して、ジェンダー規範や性にまつわる規範などを持ち出さないようにしています。さまざまな性のあり方に理解があると示すために、PROUD LIFEに広告を出したり、LGBT相談を行う場所を作ったりしています。」と先生は言います。咲江レディスクリニックでは、長島さんがLGBT関連の相談を担当しています。「私は咲江レディスクリニックの院長秘書とLGBT相談窓口の担当として働いています。また、NPO法人PROUD LIFEのスタッフと立命館大学大学院先端総合学術研究科でセクシュアリティの研究を行っている院生でもあります」と長島さんは言います。セクシャルマイノリティは社会で自分のセクシャリティを自由に表現するのに非常に苦労しているため、医療を求める場合、セックスネガティブな社会ではより脆弱になります。

「近年ではLGBTも言及されるようになってきましたが、ゲイ以外のセクシュアリティではどのような性の問題があるのか当事者ですら知らない場合もあるため、そもそも産婦人科に行くという選択肢を持ちにくい傾向があります」と丹羽先生は言います。セックスネガティブな文化はLGBTの人々が婦人科医に行くことをより困難にする可能性があることを認めなければなりません。「一応、トランスジェンダーのホルモン治療とか手術やっているところはあるはあるけど結構表立って、レインボーフラグとか理解がありますよというところが少ないですね。やっぱりトランスジェンダーの人たちはコミュニティーの中で口こみし、あそこはいいよとか言われていく」と長島さんは言います。「やるとしても病院だから手術はやる。ホルモンだけならいいとか。相談したい人にとってはハードルが高いんです。」LGBTの人にサービスを提供する場所はありますが、隠れたままでいることを望んでいるか、または相談に力を入れていないということになります。

日本での婦人科学に対するスティグマ

『ルナルナ』×「シンクパール」共同意識調査「頼れるかかりつけの婦人科を持とう」によると回答者の40%だけが婦人科医に満足していると感じていると答え、#nandanaino プロジェクトが「新型コロナウィルスと避妊不安・緊急避妊薬」についていこなった調査によると、回答者の30%は避妊薬を手に入れるために産婦人科医に行くことを思いとどまっていると答えました。

図2.日本での産婦人科学に関しての『ルナルナ』×「シンクパール」共同意識調査 [Link here] 回答者の39.9%が診察を受けた医療機関が「かかりつけ」だと感じていることを示しています。34.6%が「いいえ」と回答し、25.6%が「よくわからない」と回答しました。

図3.#nandenaino プロジェクトの「新型コロナウィルス禍、意図しない妊娠・緊急避妊薬に対する不安」調査。人々が緊急避妊訳を受け取らないことに決めた理由を示しています。31.6%は産婦人科医に診てもらうことに抵抗があるためだと回答しました。55.3%は高価であると回答し、36.8%は新型コロナウィルスに感染するのではないかと不安だと回答しました。

「やはり、まだまだ行くことに躊躇う人は多い印象があります。それは日本社会全体がいまだに性そのものについて抑圧的であったり、女性も性の主体であること、欲望を持つ主体であることを考えていないことが要因の一つでもあると思われます」と丹羽先生はなぜ日本で産婦人科医に行くことに対してスティグマを持っていると思うかについて説明します。「日本における内診はカーテンを引いて行うことが多いですが、諸外国ではそうではなく、カーテンを引かずに内科と同じ感覚で雑談しながら内診を行うことが多いです。性器も身体の一部として、特別視しないところがあります。一方で日本では内診=痛いもの怖いものといった内診自体にネガティブなイメージがあります。」セックスネガティブ文化は人々の思考だけでなく、日常でも普及しており、多くの日本の婦人科医が「セックスネガティブ」であることがその一例です。

図4.日本の骨盤検査用婦人科・産科クリニックの椅子とカーテンの画像

丹羽先生に「日本では産婦人科に対するスティグマはあると思いますか?」と聞くと、「あります」と答えす。「昔から産婦人科は赤ちゃんは産むまたは性病がある時いく病院だと思われてS T Dsがあるということはセックスに対してアクティブな女性が行くところだと思われてかもしれません。」と先生は説明します。

なぜ人は声を上げないのか?

「日本は性に関しては本当におかしいです。すごく変だと思うのになんで日本人はおかしい、おかしいという声は上げないのかな」と先生は言います。「なぜ声を上げる人がいないかというと、女性政治家が少ないからです。女性政治家は男性政治家に選ばれるか、または『男性』の様に振舞わないと出生はできないから男性よりに行ってしまうと。女性政治家はセックスしないからですね。力持っている人だとかセックスする人は少ないので力持って社会を変えられる人はセックスしていない」と丹羽先生は説明します。政治家を含む現代の日本がセックスレスな社会になるにつれ、セックス関連の問題に取り組むことがますます難しくなっています。

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